集合住宅と敷地利用権【法律情報:マンション法1】

新判断を示した 東京地裁8月22日判決とNHKニュース

銀座通り法律事務所が原告代理人となった事件で、東京地方裁判所民事44部合議係(中村 愼 裁判長)は、集合住宅と敷地利用権に関し注目すべき新判断を示しました。

この事件はNHKテレビのニュースで放映されるとともに、NHKのインターネットニュースでも配信されました。

インターネットニュースは次のとおり報じています。

「集合住宅切り離し戸建てに 撤去命じる判決」

「タウンハウス」と呼ばれる棟続きの集合住宅の一部を切り離し、一戸建ての建物を造ったことを巡って争われた裁判で、東京地方裁判所は「ほかの住民に損害を与えた」などと判断し一戸建て部分の撤去を命じる判決を言い渡しました。

東京・大田区にある12世帯が棟続きになった「タウンハウス」と呼ばれる集合住宅で、いちばん北側の所有者が自分の建物部分を切り離して新しく一戸建ての建物を造ったため、ほかの住民が「そんなことは許されない」と裁判を起こしていました。

判決で東京地方裁判所の中村愼裁判長は「タウンハウスは屋根や壁などが共用部分で、切り離したため、ほかの住民に損害を与えた」などと判断しました。
そのうえで、「新しい建物が出来たため、このままではほかの住民が以前のような建物に建て替えることができない」などとして新しく一戸建てを造った所有者に建物を撤去することなどを命じました。

被告1の土地が敷地として分離されると、原告1建物は第二種高度斜線制限によって黒塗り部分が違反建築物となる。

この判決(以下「本判決」と略します)は多くの論点で注目すべき判断を示しており、今後何回かにわたって判決をベースに区分所有建物をめぐる法律関係を考えていきたいと思います。
なお、本判決は一審判決であり、控訴が予想されますので確定しておらず、法律上の論点の題材として議論するものであることをご了承ください。

建物の区分所有等に関する法律とマンション法

実はマンション法という名前の法律はなく「建物の区分所有等に関する法律」(略して建物区分所有法)のことを世間ではマンション法と称しています。ところでマンション法という用語は正確とはいえません。建物区分所有法は「一棟の建物に構造上区分された数個の部分で独立して住居、店舗、事務所又は倉庫その他建物としての用途に供することができるものがあるときは、その各部分は、この法律の定めるところにより、 それぞれ所有権の目的とすることができる。 」と定めています(1条)。このような構造上の建物でも、一つには賃貸マンションのように一棟全体を一人の所有者が一個の建物として所有し、多数の人に賃貸するケースもあります。この場合の法律関係は間貸しと同じことになります。二つに、区分所有建物とは、中高層の共同住宅に限られるわけではなく、商業ビルか事務所ビルとしての区分所有建物もありますし、いわゆる棟割長屋やタウンハウス、あるいは親子で一階、二階を区分して所有するといった小規模な区分所有建物もあります。建物区分所有法は、このようなあらゆる区分所有関係に適用されます(法務省民事局参事官室編「新しいマンション法」3頁 1983年1月発行)。

連棟式建物・タウンハウス・テラスハウス

本判決の対象となった建物は、一棟の建物が12の区分所有建物が縦に連なっている状態で、本判決はこれを連棟式建物Aと称し、被告が自己の所有の区分建物を切り離した残りの11棟を連棟式建物A’と称しています。連棟式建物は昔風でいえば棟割(縦割り)長屋と言われますが、長屋と言えば大家と八っつぁん、クマさんの世界でイメージが良くないので、今ではタウンハウスとかテラスハウスとか呼ばれています。大家と八っつぁん、クマさんは賃貸人と賃借人で、八っつぁん、クマさんが独立して区分建物をもっていなかった(法律もなかった)から、賃貸マンションと同じケースで、本件とは権利義務関係が全く異なります。話は横道にそれましたが、本件では12の独立した区分所有建物が連棟式でつながって一棟の建物となっていたもので、正に建物区分所有法が適用される建物です。

連棟式建物と敷地利用権

連棟式建物においては、連棟式建物の敷地は多くの場合、分筆され各専有建物の所有者がその真下の土地を所有しているケースが多いと思います。そのため自己名義の土地は自分で自由に処分できると思いがちです。しかし、建物を建てることができたのは、一棟の建物として土地全部を敷地として使用できるからで、個々バラバラになるとそれぞれが建築基準法令や条例の制限を受けて従来と同じ建物を建てることは不可能になります。それぞれがお互いに自己所有の土地を出し合っているからこそ、大きな一棟の建物を建てることができます。言い換えれば、相互に敷地利用権を設定しており、本判決ではその敷地利用権は地上権か賃借権であると判断しました。これは画期的な判断で従来は区分所有法の昭和58年改正の際の立法担当官の誤った解釈が無批判に承継され、所有権と独立した権利としての賃借権や地上権はなく、所有権に包含されるとしていました。しかし被告土地に原告らが持つ敷地利用権は被告の所有権と対立する権利であり、被告土地に包含することはできない筈です。本判決は従来から続いたあいまいで、まちがった解釈にピリオドを打つものとして、意義の大きいものだと思います。

銀座通り法律事務所では、個人・法人を問わず法律相談を受け付けています。

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