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 事例紹介 - 株主総会の準備と運営

株主総会準備・運営と弁護士の役割その1

 【定時株主総会ラッシュ】

 日本の会社は国の会計年度にあわせて決算日を3月31日とする会社が圧倒的に多くなっています。上場企業の定時株主総会は決算日から3カ月以内に開かなければならず、そのため6月下旬は定時株主総会のラッシュです。各企業は5月中旬に決算短信を発表し、平成22年3月期の決算を明らかにします。6月1日の段階では定時株主総会の招集通知の最終稿が確定し印刷の段階に入っているのが通常です。

【総会屋】

 総会屋(そうかいや) とは正規の職業ではなく、株式会社の株式を若干数保有し株主としての権利行使を濫用することで会社等から不当に金品を収受、又は要求する者を指す。別名として「特殊株主」「プロ株主」等があり、英語では違法事業者を指すracketeerと訳されることが多い。

株主総会の活性化を阻害する「資本主義の暗部」の存在だが、1981年(昭和56年)、1997年(平成9年)の2度の商法改正により、その活動が従来より著しく制約された現在、警察庁がその活動を確認できるのは400人弱とされる。(Wikipediaより)

 私がはじめて総会屋を直接知ったのは、総会屋の推定人数が8000人を超えていた1970年代終わりの頃で、総会屋全盛時代の時です。東京証券取引所第一部上場のある会社の株主総会でした。何人かの野党総会屋が会社に対し厳しい質問をぶつけ、初体験の私はどうなることかとはらはらと聞いていました。しかし最後に与党総会屋が会社の業績をほめたたえる発言をして採決に入っていました。与党総会屋の閉めの発言の時、議長である社長が無反応な表情で空(くう)を見つめて聞き流し発言が終わるのを待っていた姿が印象的でした。

【1981年の商法改正により 株主の権利行使に関する利益供与の罪が新設された】

 1981年に商法が改正され、「会社ハ何人ニ対シテモ株主権ノ行使ニ関シ財産上ノ利益ヲ供与スルコトヲ得ズ」という規定が新設され、かつこれに違反した場合には、利益を供与した取締役や従業員も利益を得た株主も懲役又は罰金の刑事罰を受けることになりました。この改正後、多くの企業は総会屋からの金品の要求を拒否し、株主総会に臨みました。商法改正後の株主総会で一つ一つの質問にていねいに答えるように努めた企業が少なくなく、これに対し総会屋は質問攻めの姿勢をとり、そのため長時間総会となりました。その典型が1984年1月30日のソニーの株主総会で12時間半という記録を作った「マラソン総会」となり「総会屋死なず」という衝撃を企業関係者に与えました。

【総会屋と弁護士】

 1981年の商法改正前は多くの企業が総会屋を必要悪と割り切り、総会屋とつかず離れずの関係を続けていました。当該企業が困った問題を抱えているときに弁護士が立会いを求められることがありましたが、株主総会において弁護士が主導的な役割をはたすことは希でした。1981年の商法改正後は総会屋に金品を渡すと罪になるし、片や金品を渡さないと長時間総会の洗礼を受けることになり、社長以下経営陣が頭を悩ますようになりました。このような状況の中で、総会屋に金品を渡すことなく、総会屋の執拗な発言を合法的に制限するためのアドバイザーとして弁護士が注目され、弁護士が主導的な役割をはたすようになりました。商法改正後の十数年は総会屋(プロ株主)対策が中心であり、弁護士のアドバイスを得て、会社主導の強行採決路線が定着しました。これを機に弁護士が議長である社長に直接アドバイスする関係が成立し、企業における弁護士の地位が向上しました。それまでは大きな企業では弁護士が企業のトップと話をすることはほとんどありませんでした。弁護士が打ちあわせをする相手は総務課長どまりで、総務部長と打ちあわせをすることも希でした。企業において弁護士の地位が向上したのは、ほかならぬ総会屋のおかげかもしれません。

【一般株主の発言の増加】

 警察・検察による厳罰主義が功を奏し、最近では総会屋(プロ株主)の発言はほとんど見られなくなりました。かわって普通の一般株主の質問が増えてきました。これら株主の質問はごくごく普通の質問が多く、企業も強行採決方式での株主総会運営を改め、ていねいに質問に答えるように努めています。
株主総会の準備・運営において弁護士に与えられた役割は、会社が株主総会を法令にそって正しく準備し、株主総会当日においても法令にそって正しく運営し、決議することをサポートする点にあります。株主総会は6月下旬に集中しますので関わる弁護士も多数となります。一人の弁護士が株主総会に出席して直接指導できるのは数社が限界で、言いかえれば関与弁護士が分散化し、多数の弁護士と上場企業経営陣との間にそれぞれのやり方で信頼関係が醸成されています。これは弁護士に与えられた願ってもないチャンスです。チャンスというのは単に企業から総会指導料を受け取るというビジネス的な意味だけではありません。それよりも定時株主総会という企業にとって一年で最も重要な場で、企業トップと意見交換をすることにより、法律の世界にとじこもりがちな弁護士が経済界の空気に直に触れる数少ない貴重な時間をもてることの意味が大きいと思います。弁護士としてはその株主総会が将来決議取消事由とならないよう法的に瑕疵(キズ)のない株主総会として完結させることに意を尽くすことになります。

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