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 事例紹介 - 株主総会の準備と運営

株主総会準備・運営と弁護士の役割その2 一般株主主体の株主総会と弁護士の役割

【最近の6月定時総会の状況】

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 リタイヤ層や主婦等を中心に総会への関心は高まっており、出席株主数は増加傾向にあります。また、発言あり社数も年々増加傾向にあり、いまや発言のない会社が少数派となっているという状況です。
(中略)
株主の発言の内容は、例年同様、「経営政策」、「配当政策・株主還元」、「財務状況」、「株価動向」といったテーマが多くなっています。(三菱UFJ信託銀行証券代行部編「新株主総会実務平成22年版」2~3頁より)

 リタイヤ層や主婦というごく普通の市民の質問・発言なので、その内容もごく普通のもので、かつてのプロ株主のようにクセ玉が飛んでくることはありません。質問内容はその年の招集通知書に記載されたものや株価が中心で、回答する側の取締役としては、真面目に経営をしているかぎり臆するものは何もなく、率直に述べれば良いことです。マスコミをにぎわす企業買収がらみの株主総会はごくまれなことで、どの定期総会においても会社(取締役会)の提案した議案が可決されています。

【株主総会の決議取消の訴え】

<会社法の規定>

 株主総会の決議が法令・定款に違反していると瑕疵(かし)ある決議として裁判所が取消す危険があります。
会社法は、株主総会の議決取消しの訴えについて次のとおり規定しています(831条1項)。

(株主総会等の決議の取消しの訴え)
〔831条1項〕
次の各号に掲げる場合には、株主は、株主総会の決議の日から三箇月以内に、訴えをもって当該決議の取消しを請求することができる。
①  株主総会等の招集の手続又は決議の方法が法令若しくは定款に違反し、又は著しく不公正なとき。
②  株主総会等の決議の内容が定款に違反するとき。
③  株主総会等の決議について特別の利害関係を有する者が議決権を行使したことによって、著しく不当な決議がされたとき。

<招集通知書>

 ①が手続上の瑕疵(かし)、②が内容上の瑕疵を事由とする株主総会決議の取消し請求です。手続上でまちがいを起こしやすいのは招集通知書の発送日です。会社法は「株主総会を招集するには、取締役は株主総会の日の2週間(公開会社でない株式会社にあっては1週間)前までに、株主に対してその通知を発しなければならない」と規定しています(299条1項)。この2週間というのは発送日と株主総会の当日との間に中2週間(14日間)を置くことを求めています。したがって、例えば定時株主総会の日が6月24日の木曜日とすると、発送は遅くとも2週間前の水曜日の9日には発送しなければなりません。2週間前の木曜日では1日足りません。法が2週間と定めたのは、株主が賛否を決める上で最低2週間の検討期間が必要と定めたもので、これを1日欠けても決議は消されます。招集通知が一部の人に届いていない場合も同様に取消されてしまいます。したがって招集通知書の事前チェックはきわめて重要で、私は表紙1枚目、決議議案、株主総会参考書類、議決権行使書につき法令や定款に違反していないか事前チェックをします。招集通知書の原稿は5月下旬から顧問会社よりメールで送られてきます。ただ、多くの弁護士は訴訟案件の仕事の合間をぬってチェックしますので、弁護士チェックは万全なものではないのが実情です。幸いにも今では招集通知書を印刷する会社が、印刷会社という面だけでなく、企業のディスクロージャの仕方について情報豊富な経験からプロとして、招集通知書の内容について事前に法務チェックをしています。また株主名簿管理人である担当信託会社もたくさんの会社に関する豊富な経験の中で、事前チェックをしています。したがって弁護士としては招集通知書の事前チェックについて役割分担を明確にしておくことが大切だといえます。

<取締役・監査役の説明義務>

 会社法は「取締役、会計参与、監査役及び執行役は、株主総会において、株主から特定の事項について説明を求められた場合には、当該事項について必要な説明をしなければならない」と定めています(314条1項)。この説明義務が不十分であれば、決議が取消されることがあります。これまでに説明不十分で取消されたのは、役員に対する退職慰労金贈呈議案で、株主に十分な説明をせず、会社の内規にしたがって、取締役会決議並びに監査役の協議に一任するという決議を行ったブリヂストン事件(東京地判昭和63年1月28日)と南都銀行事件(奈良地判平成12年3月29日)です。最近は役員報酬や退職慰労金も可能なかぎり開示する傾向になっており、少なくとも退職する取締役全員並びに監査役全員のおおよその総額がわかるように説明をした方が無難であり、私はそのようにアドバイスしています。説明義務の範囲は、平均的な株主が議案の賛否を判断するために必要な情報を提供することに尽きており、そんなにむつかしいことではありません。

<取消し請求は3カ月以内の訴えをもってする必要がある>

 株主が株主総会の決議取消しを請求するためには、決議の日から3カ月以内に訴え(裁判)を起こす必要があります。招集通知の発送日が1日遅れていても3カ月以内の訴え提起がなければ有効なものとして確定します。プロ株主が姿を消し、一般株主主体の時代になって、費用をかけてまで裁判を起こす株主は社会参加型の株主総会(○○電力決議取消請求事件など)を除いてほとんどないと言えます。決議を取消されたブリヂストン事件及び南都銀行事件は、会社側は翌年の株主総会で全額を提示して再決議をしており、その結果控訴審ではブリヂストン事件では会社側の敗訴部分を取消し、株主の請求を却下しました。南都銀行事件は和解で終了しています。このような事後対策もありますが、会社側からアドバイスを求められた弁護士の立場としては、事後対策の必要がない、法的瑕疵の全くない株主総会として完結するよう、事前に準備・運営の進行状況全般の注視を怠らず、間髪を入れない迅速で明快な助言・指導に努めるべきです。そのために会社は株主プロ(特殊株主)ではなく法律プロ(弁護士)に依頼しているのであり、法律プロとして依頼企業の信頼に応える必要があります。

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